敵のあそこを触ることで世界観をおぼっちゃまくんにすり替えてきた話
小学生のころのおれは本当によくヤンキーにからまれた。アンケートをとってみると「なんかムカつく」という理由が例外なく100パーセントだった。ヤンキーの本能に直接訴えているとしか思えないおれの「ムカつくフェロモン」のせいでからまれるならもう、諦めるしかない。早々と悟った菅波少年だったが、ただやられるのはあまりに悔しいので小さな抵抗を2つ、からまれるたびにすべてのヤンキーに向けて行っていた 。
1つ目は肩パンとかモモパンなど凶悪な攻撃をされても「うっすいリアクションで返す」という技。もちろん痛いことは痛いので、「あひいいい」とか叫びたくなるのだがそこを堪えてすごい無表情でじっと相手を見つめるのだ。結局、どんな行動でも人間はリアクションを求める生き物。だから無表情で通すと石像かなんかを相手してるような気分になってヤンキーの心が明らかに萎えるのでおすすめだ。
もう一つは高度な技術が必要な技だが、「隙を見て相手のあそこを触る」という技だ。結果相手が激昂しようがどうでもいい。この技はヤンキーが酔いしれてる世界観をぶっ壊すことが目的だ。ヤンキーの立場に立って考えてみよう。ひとに攻撃を仕掛けているとき、彼らには、大好きなヤンキー漫画のタッチで世界が見えている。劇画タッチの迫力のある弱肉強食の世界だ。しかしおれがあそこを触るのを成功させれば、一気に「おぼっちゃまくん」の世界観になる。アホなギャグ漫画の世界に変わる。しかもヤンキーであろうとおれの世代の小学生は一人残らず「おぼっちゃまくん」を読んでいたため、あそこを触られると笑ってしまうクセがついているのだ。どうだろう。やり返すなんて無理ゲーだが、やつらの酔いしれている世界観を一瞬ぶっ壊すことができるのだ。さすがちんこ。おれはこの技でハードボイルドな子供時代を生き抜いてきた。ただ、おすすめはしない。
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