「おめえ、どこ中だ」ってうちの親父が友人にからんだ話
今日もたいした話ではないのだが、お付き合い願いたい。
まず、解説から。
「おめえ、どこ中だ」とは。
全国的にはわからないが、福島では中学生のヤンキー同士が一触即発になった時にこのセリフをどちらともなくメンチを切りながら言うのがしきたり。
「どこの中学校のもんだ?」という意味になる。学業のレベルと別にヤンキーの中での「強い学校ランキング」があり、どれだけ過酷な環境で揉まれてる猛者なのかを確認するために使う。
高校一年というヒューマンステージ
ちょうど今ぐらいの季節。高校入学して間もなく、クラスメイトとの親交が深まり我が実家に招いて男だけのお泊まり会が開催された。友人はうっすらとヤンキーの匂いのする男ではあった。茶髪&ピアスの風貌、しかし話してみるとユーモアに溢れ、とてもいいやつだった。
おれたちは夜中、中間テストだかなんだかに向けて勉強をやっていた(普通科という真面目なクラスだった)。高校一年といってもまだまだ中学生にちんげが、失礼、毛が生えたようなヒューマンステージだったので夜中のテンションで国語教師の物まねをしたりしてゲラゲラ騒いでいた。
現れた悪魔
そこに親父が運悪く通りかかった。ゲラってた俺たちは親父が襖の向こうで立ち止まるまで全く気がつかなかった。実家の奥の誰も寄りつかない暗黒地帯である親父の自室から、酒のつまみである「くさや」を茶の間に取りに行く途中でおれたちのゲラ笑いを聞いたのだ。襖を音速で開けた親父。驚いた茶髪の友達が振り向く。そしてその、ヤンキーにしてはつぶらな瞳を見据えて。
親父は言った、「おめえ、どこ中だ」
うちの親父はなかなかに背丈もあり白髪ひげ面曇りガラスの眼鏡に金のネックレスで一年中肌が小麦色だった。話し合いの一切できなそうなギラつきをまとったやばい人間だった(かたぎです)。ゆえにおれたちは恐怖に凍り付いた。
一番面食らったのは茶髪だ。友人は高校に入学したと同時にビーバップな世界にオサラバし、チャラくなり、あわよくばモテモテを目指そうという矢先に、高校生に向かっておっさんが出身中学を聞いてくるという異常事態に見舞われたわけだ。
「おめえ、どこ中だ」
親父はもう一度、声を押し殺すように言った。茶髪が「郡山○○中です」と消えそうな声で言うと、「あの辺のやつか、、、もう一回馬鹿騒ぎしたら、わかってっぺな!」と親父は吐き捨て、「くさや」を手に入れるためその場を立ち去った。親父は友達の居住地を知りたかったのか?ならばなぜ中学校を基準に地理を認識しているのか。訳がわからない。
親父の部屋のドアがバチーンと閉まった音がするやいなや、おれと友達は同時に吹き出した。そりゃそうだ、高校生にとって緊張が去った後にはゲラ笑いが待っている。それ以降おれたちの間でしばらく「おめえ、どこ中だ」が流行った。