すが雑談

菅波栄純。1979年10月16日生まれ。福島県出身。 結成20年を経て活動中のバンドTHE BACK HORN所属。 ギタリスト/作詞作曲者。お仕事のご依頼はこちら eijun@ve.jvcmusic.co.jp 人生は結局喜劇だと思う。

バンド名が放送禁止用語のバンドのベーシストと再開した話

再会の瞬間は突然やってきた。

 

向こうから酩酊した弱そうなチンピラが駆け寄ってきて、手前でよろけてエビ的な動きを見せた。「えいじゅんさん、えいじゅんさん!」間近で見ると目が宇宙にイッちゃっている。その多幸感に包まれた男はおれが昔THE BACK HORNと別に組んでいた江戸末期系パンクバンドのベーシストだった。

 

ここは泣く子もキマる、とある音楽フェスの奥地のヒッピーゾーン。ライブを見、じゃがバターを食べ、ライブを見、酒を飲み、とやってるうちに気づくとそこはおしゃれ女子と酩酊したチンピラしかいない最果ての天国。おれはあくまでスタイリッシュにダンスをたしなみ、自慢のステップをおしゃれ女子へ南国の鳥よろしくアピールしてたところへ、そいつは現れたのだ。久しぶりに見る、ニヤニヤが止まらない顔面であった。

 

「やっぱりその気持ちわりい踊り方、えいじゅんさんだー。元気してましたぁ?おれはもう、完全にやらっちぇます(やられてます)!」

 

一気におしゃれ天国が福島の田舎のスーパーに見えてきた。しかし、俺はうれしかった。思わず抱きしめた。「おめー、どこさ行ってたんだよぉ、びっくりしたんだがんね(びっくりしたんだぞ)」。

そのベーシストは、前触れもなく失踪して何年も行方知れずだった。噂好きな田舎では、あぶない商売に手を出して逃げてるとかヤバイひとの彼女に手を出して逃げてるとか、とにかく人生から全力で逃げてるっていうことになっていたが、天国で会ったとなるとあながち間違いではなかったようだ。

 

その夜おれたちは再会を祝し盛り上がるだけ盛り上がった。もうおしゃれ女子なんて見えていない。おれとそいつは競い合うように気持ちわりい踊りを踊りながらバカ騒ぎした。

 

どこにいってたかどうかは聞かなかったし、今の連絡先も聞かなかった。それでいい。あいつが無事ならば。

 

それに、連絡先を聞いて危ないことに巻き込まれたら嫌だったし。

 

しかもあいつ、おれのダンスを気持ちわりいと思ってたんか、裏で笑ってたに違いない。というところにムカついたのもあり。

 

年齢的にはおれのほうが上だぞ。一応敬語だけど思い出したら言ってる内容、常に小馬鹿にしてるスタンスだったな、昔から。

 

まじで心配して損したな。しぶといわ、こいつ。笑える。まあ、今までの無礼は許してやろう。飲め飲め、ばーーーか!!

 

ちなみにそいつは今、愛する彼女のために真面目に働いてます。悔しいが無事ハッピーエンド方面でこの話はおしまい。